男と女 その2

 

いまは亡きウォルター・レアードの言葉を借りて

「Nothing Changes Nothing Happens」といいましょう。

 

男と女・・・・表現者としてのお話です。

昨日の〈その1〉のブログのつづき。

〈普遍〉的な男と女の話の前に、キャラクター作りに専念していた時のことをお話しましょう。

競技ダンスLATINは5種目あります。

チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソ・ドブレ、ジャイヴです。

レアード先生は、それはそれは、〈女〉について〈男〉について、イメージではなく、体の使い方足の先から指の先までうるさかったです。男性とコネクションしている手の筋肉の出方までも女は女らしく男は男らしく。

けっして空想や夢物語ではなく、紛れもなく身体論でした。ボーンメソッドが生まれたルーツはここにあります。

ダンスの基本動作のための基本身体・・・ボディワークこそ教えては頂きませんでしたが、競技LATINの基礎アクションをするうえで、ミリ単位のダメだしがありましたよ。

「それはセクシーだ」「それはアグリー」・・・・ミリ単位の動作でですよ。そのくらい微細に指導されました。

 

さて、きょうはキャラクターのお話。男性、女性というのも、踊る上でひとつのキャラクターですが、先に述べた競技種目において、わたくしは、〈チャチャチャを踊る女〉〈サンバを踊る女〉・・・以下種目ごとに

という具合に、種目ごとに女性のキャラクターを変えようと研究しました。

競技ダンスはイギリス発祥ですが、そのもとはキューバやブラジルやスペインなどから発想を得たものです。

したがって、チャチャチャはキューバですが、サンバはブラジルと国が違います。音楽の違いは言うまでもありません。ただ、競技ダンスはプリミティヴなリズムやオウセンティックな雰囲気はありません。イギリス産です。

 

わたしは性分で、ルーツをたどるのが好きなもので(これが厄介なのかもしれませんが)、

キャラクターを作るうえで、いろいろ妄想の旅に出ました。自分なりにいろいろ調べました。

チャチャチャを踊る女の心境、サンバを踊る女の心境etc.自分なりに感じたことを踊りにこめました。

感情やイメージではなく、身体にです。

競技の場合は種目ごとに衣装を変えることはできませんので、ある意味では身体一本でキャラクターを変えなければなりません。なので、ホントにいろいろ研究しました。

だから稽古時間がどうしても一日何時間にも及ぶのです。1種目に一日かかる場合もありますしね。

稽古スケジュールもきちんと創らないと、5種目の完成を競技会に向けていくのは至難の業です。

 

さて、キャラクター作りは、まず女としての唯一無二のキャラクターと、各種目のキャラクター、

そして、それぞれが〈普遍〉であることを目指しました。〈わたし〉でなくてもよいのではと。

いまおもえば、この訓練が後に競技選手から〈表現者〉に移行した礎になったのではと自分なりに思います。

 

競技ダンスには5種目競技のほかにショーダンス選手権というのがあります。キャラ作りや創作がすきなわたしは、ショーダンスも好きでした。

踊ったテーマは、ジプシー、ジャングル、カルメン、トランスパレントなクールLATIN、カルーソ(他にあったかな。。)などなどです。

カップルダンスですから、まだ〈男〉と〈女〉ですね。

でも〈普遍〉にたどり着いてからは〈わたし〉ではありません。

引退前の最後のショーダンスのテーマはカルメンでした。このテーマで踊るのは競技人生では2度目です。1度目とはまったく違うカルメンです。年齢も重ねましたし、踊りも上達していますから変化は自然の流れです。

TVクルーには、「のりうつってました。」といわれました(汗。。。)

もちろんそんなことはありません。ただ、そう見えたのなら(しかもプロに)、それだけ〈普遍〉になれていたのだと思います。いまでいう〈透明〉ですね。

感情表現に自己満足に酔うのではなく、極めて冷静に肉だけに没頭(つまり身体)した成果だと思います。

いまのわたしの身体論『DEEP MOVEMENT』が名前はまだついていませんが、自分の身体に芽を出したのはこのころです。

世界戦で外国人審査員から「セクシーすぎる」といわれました。セクシーすぎるってなんでしょう?

ドラマチックな作品ではありましたが。エロくはありません(爆)

 

〈普遍〉を身に着けたわたくしは、このころ、宇宙の采配としか思えない出会いに恵まれます。

 

そうです!舞踏家 大野一雄にめぐり合ったのです。しかもニジンスキーの紹介です。(この辺がもう妖しいですね 笑。。)

 

〈舞踏〉へ惹きつけられたのは(厳密には大野一雄の舞踏だったわけですが)

〈普遍〉の極みを見たからなんです。

 

 

さてさて、ここからわたくしの人生は一変し始めます。

舞踊史を紐解き、自身の身体の深遠にもぐり、

神秘主義、シュルレアリズムへと花開いていきます。花・・・・開いたのでしょうか。。。

でも、そういう感じでした。

 

さて、

〈男〉〈女〉からスタートしたわたしのダンス人生は、訓練していくうちに〈普遍的な男〉〈普遍的な女〉となり

舞踏家大野一雄との出会いで、

〈存在〉〈宇宙〉〈事物を越えたもの〉などなどへ旅立っていきます。

 

昨日のブログ〈その1〉でお話しました。テクニカル的に自分の身体と相手の身体の狭間が消えたのと微妙にリンクします。空間と自分の狭間が消えていくのです。

 

そして驚いたことに、知的障害の重度自閉のかたの身体感覚とは、そういったものだというではありませんか!

 

ここまでで、今日は終わります。つづく。

次回はなぜ「男と女」というテーマをこのたび、いまさら(わたしにとって)取り上げたのかに触れていきたいと思います。

 

さいごまで読んでいただきありがとうございます。つづきもお楽しみに。

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